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開業カウンセラーの日常

かくされた秩序


クリスチャンでもある作家の故椎名麟三氏が自殺を考えた時、ドストエフスキーの『悪霊』のなかのニヒリスト;キリーロフが、一枚の木の葉の美しさにうたれて、突然人生を賛美する場面を読み、自殺を思いとどまったということである。

同じくドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の中で、イワンは…
「たとえ物の秩序を信じないとしても、僕にとっては、春に芽を出したばかりの若葉が尊いのだ。瑠璃色の空が尊いのだ。ここには知識も理論もない。ただ内発的な愛があるばかりだ」…と述べている。

また、尊敬する大老が…
「去年、箱根に湯治に行った時、そこの山道で地に落ちた病葉(わくらば)の一つを拾い上げ、晩秋の陽光のもとに葉裏にありありと透けて見える葉脈に、大自然の息吹を感じ、いたく心をうたれた」…とおっしゃられた。

あるクライアントも、彼女は与えるだけの愛情に疲れ、生きがいとして始めた仕事にも疲れ、胃潰瘍を患っていた。
「私も先生のカウンセリングを受けていて、イワンのお話の時、同じような内発的な愛を感じ、帰宅してからポロポロと涙が出てきて、生への意欲が少し戻ってきました…」

ニュートンは万有引力の法則を発見したわけだが、この法則(秩序)にしても、紙に書かれたただの数式ではなく、いまここで生きて動いているダイナミックな力にほかならない。
だから、われわれ一人一人の中で働いている力としての秩序は、われわれみんなが共に分かちあっている大きな力ないし秩序の一部分なのである。
幻想詩人;フランシス・トムスンの歌のように…
「なんじ、地の草花の一つだに揺すらば、空なる星も共に乱されん」

仏教であれキリスト教であれイスラム教であれ、洋の東西を問わず、あらゆる宗教の中心をなすものは、一体性ないし全体性の概念と体験である。

今日、われわれにとって可能なことは、自然を神話化することではなく、ある畏敬の念をもって接し、われわれの感覚を超えた自然の秘密;かくされた秩序を、超越的なものとして信じるのではなく、自分の肌で実感できるところまでに気づきの能力を拡張し、深化(意識の拡大)することではないだろうか。

宇宙飛行士のエドガー・ミッチェルは、月に行く途中…
「自己が宇宙と溶け合っていく」
と感じ、この一体感を体験したことで、自分の生涯をかけてこれらを解明しようと決意して牧師になった。
彼はさらに…
「われわれのすべてが月に行けるわけではない。しかし、かくされた秩序への気づきが深まれば、おそらく私が感じたのと同様な世界が開けてくるだろう」!



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プロフィール

Dr.Psycho

Author:Dr.Psycho
【心理カウンセラー「心のデトックス」】
もう開業して26年目になります
横浜と新潟にオフィスがあり
月のうち10日間ほど新潟に滞在

【武道家】
空手道ですが 示現流もやります

【モータースポーツ】
国内A級ライセンス

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