『草枕』の冒頭で漱石はこう書き出している。
「山路を登りながら、こう考えた。知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」。これが、人の世の定めというものである。どうあがいてみても、ここから抜け出せるものではない。
それに続けて「人の世を作ったのは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣にちらちらする唯の人である。唯の人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の国よりなお住みにくかろう」。そう居直って、「どこへ越しても住みにくいと悟ったとき、詩が生まれて絵が出来る」
・・・と漱石は文学・芸術が生まれる理由を説いている。
われわれ凡人には芸術を通して、人の世の住みにくさからくる心のモヤモヤを昇華するのは難しいかもしれないが、それにふれて心を癒すことは出来るだろう。
また、スポーツ等に打ち込んでコンプレックスを克服することも出来るだろう。
しかし、大切なのは、まずこれらの代償作用には限界があるということを理解することである。
そして、人間的な欲望をコントロールして、自他の対立や個と集団とのあつれきを和らげたり解消したりする上で、
一番基本になるのは、自他を肯定し、お互いに相手の主体性を尊びながら調和していける、健康な人間観とセルフコントロール法を培うことなのである。
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